2011年09月11日

地球人類の危機

久方ぶりに小説UP。
SF系のショートショート。



 地球人類の危機

 人類が火星に到達するより早く、はるか遠い宇宙から唐突に敵対宇宙人が地球に攻めよせて来た。圧倒的な科学力の前に、地球の各都市は次々と打撃を受けた。しかし共通の敵を前にして、地球人類は一致団結。かつてない資金が対宇宙人殲滅研究所、通称U・K・Lに集中した。U・K・Lは地球の科学力を結集し、対宇宙人用人型兵器・アースを開発。アースの性能は宇宙人のそれを凌駕した。地球人の反撃が始まった。

 アースの右手から放たれたレーザーが、宇宙人の戦艦を撃ち落とした。
「へへへ、今ので丁度百隻目。ノルマ達成だぜ」
 彼は太郎。世界中で配られたアース搭乗士養成プログラムによる適正で選ばれたアースの操縦士だ。今や宇宙人と最前線で戦う英雄である。
 その時、撃墜された戦艦の爆発にまぎれ、小型の円盤型がアースに向けてビームを放った。搭乗者はその攻撃にまるで気付いていない。
「ご主人様、右後方より攻撃です。左にはねて!」
 少女の声に太郎はアースを蹴りあげ攻撃を避けた。同時に攻撃が飛んできた方向にレーザーを放つ。一瞬遅れて鳴った爆発音が、敵の撃破を知らせた。
「お見事です、ご主人様」
「君のおかげだよ、アクア。ありがとう」
「いいえ。そんなことよりご主人様が無事で本当によかった」
 そう言って彼女は太郎に笑顔を向けた。彼女はアクア。アースのパイロットを補助する為に現代科学の結晶が詰められた、サポートプログラムのホログラフィックである。
「でも敵はまだ残っています。気をつけてくださいね」
 優しい声をかけてくる彼女に、太郎は「もちろんだよ」と笑顔を返す。そしてアースを通して敵の方に視線を向けた。操縦桿をにぎる彼の手に、アクアの手がそっと重ねられる。彼女には実体が無いので質量を感じることは出来ない。だけど何か温かいものが流れてくる事を太郎は感じた。
 アースに乗って戦うことは肉体的にも精神的にも多大な疲労がかかる。しかし太郎は辛さを感じることもなく、むしろ充足感を感じていた。元はニートだった自分がアースに乗っていることきは、世界中の誰よりも必要とされている。そしてアースに載っているときはアクアが、彼女がずっと太郎と一緒にいてくれるのだ。
 新たに宇宙人の増援が現れ、太郎とアースを倒そうと陣形を組んでいく。隣ではアクアが敵の数と有効な戦術パターンいくつかを次々と解析してくれていた。
 敵は宇宙人艦隊大多数。だが、このアースとアクアが一緒なら負ける気はしない。

 それから数カ月が経った。太郎の活躍と地球人類の団結によりついに地球から宇宙人は撤退する。その勝利の前に人類は歓喜と、亡くなった人々に対する哀悼の涙で溢れかえった。同時にこの戦争の英雄である太郎にはおしみない賛辞が贈られた。
「ありがとう、太郎君。この度の勝利は君のおかげだよ」
 英雄である太郎を、世界中の首脳達が出迎えた。
「いえ、地球人類の為です。この度宇宙人は撤退しましたが、まだいつ攻めてくるかわかりません。引き続き僕がアースに乗って、地球人類の為に戦います」
 太郎の言葉に、首脳達は複雑な顔を浮かべる。
「そのことなんだがアースは廃棄されることになった。あ、もちろん英雄の君には新たな仕事についてもらうつもりだが」
「な! まだ敵がいるかもしれないというのになぜですか? 納得できません」
「君には知る権利があるな」
 一同を代表して、太郎の国の首脳が彼の疑問に答えた。
「この度の勝利は君の活躍のおかげだが、何より人類が地球に誕生して以来、初めて世界中の人間が手を取り合ったことが大きい。しかしアースの戦闘力は甚大だ。それがあれば今後の他国との軍事バランスが大きく崩れる」
「今でもあれの所有権を主張する国が出始めている。折角つかみ取った平和だ。今回亡くなった者達の為にも守り続けなければいけない」
 もう一人が補足説明を加えた。彼らの口調からは、今後世界の平和を守り続けなければならないという使命感に溢れていた。
「ではアクアはどうなるのです?」
「彼女はアースの補助プログラムだ。アースと共に封印される事になるだろう」
 それを言った首脳が次に口を開いたときに出た言葉は、自らの最後の悲鳴であった。驚く首脳陣達に次々と銃弾が浴びせられ、やがてその場に動く者はいなくなった。
「アクアは僕が守る」
 そう言い残すと、太郎はアースを奪い姿を消した。

 アースの右手から放たれたレーザーが戦闘機を撃ち落とした。
「おめでとうございます。今ので同じ識別信号をもった敵は最後です」
 アクアの声に太郎は優しく微笑み返した。いずこの国旗か忘れた国の部隊は全滅させた。しかし後方には新たな軍が控えている。
「更に敵が攻めてきます。ご主人様はお身体は大丈夫ですか? 無理していませんか?」
「大丈夫さ、アクア。君と一緒ならね」
「はい、ご主人様。アクアもご主人様といられることが何よりのしあわせです」
 アクアは天使のような笑顔を太郎に向ける。この笑顔がそばにあるなら、僕は全てが敵でも構わない。
 敵は地球人大多数。だけど太郎は、アクアと一緒なら負ける気はしなかった。


posted by スナフキン at 00:26| Comment(0) | TrackBack(0) | オリジナル小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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